組織学習と組織ルーチン


探索問題・融合問題

 組織のルーチンに関する既存研究では、以下の2点が指摘されてきた。

  1. 探索問題: 既存のルーチンに熟達すると、新しい分野の探索(遠方探索)が困難になる(Levitt & March, 1988; March,1991)。
  2. 融合問題: 遠方探索は既存のルーチンを失わせる傾向があり、ましてや既存のルーチンと遠方探索の結果を融合して新しいルーチンを生み出すことはできない(Gavetti & Levinthal, 2000; Levinthal & Rerup,2006)。
しかし、Inamizu, Ikuine, and Sato (2023)が、ある日本のベンチャー企業を調べたところ、これらの問題を乗り越えて競争優位のある事業の創出に成功していた。実際には、無意識のうちに実行されるほどに既存ルーチンに熟達していれば、かえって (1)遠方探索を促進し、(2)遠方探索の結果を既存のルーチンに融合できるのである。つまり、起業家の行動とイノベーションのプロセスにおいては「無意識に実行されるルーチン」が重要だったことになる。


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