情報技術の導入は制作体制にどのような影響を与えるのか。Ichikohji (2013)は、日本のアニメ産業を事例に、その制作工程を工程ごと、技術ごとに詳細に検討することで、情報技術導入による制作工程の変化並びに効果、制作工程の内製・外注の変化について明らかにする。対象とする工程は、「彩色」工程以降・並びに「作画」工程である。特に作画工程では、3DCGとデジタル作画の二つの技術を取り扱う。結果として、以下のことが明らかになった。第一に、情報技術は、低コスト化や高品質化のメリットが顕在化されるまで導入されない。第二に、情報技術を導入された工程が内製されるようになるか・外注されるようになるかに関しては、以下のいくつかの点に依存する。外注から内製につながるのは、情報技術の導入によって、複数の工程が統合されるか、制作工程の柔軟性が向上する場合である。一方で、内製から外注につながるのは、デジタル化されたデータがストレージメディアやインターネットを通じて納入されるようになり、外注コストが低下する場合である。