購買行動


社会ネットワークと購買行動

 化粧品は、一見どの商品を使っているのか判断できない。そこで、Kuwashima (2018) は、顕示性のない財である化粧品について、消費者ネットワークがどのような影響を及ぼすかを分析する。化粧品のクチコミサイトにおけるクチコミを購買行動の代理変数とし、消費者ネットワークと購買行動の関係を社会ネットワーク分析で分析する。顕示性のない財である化粧品においては、直接結合のときだけでなく、ネットワーク内で構造同値の関係にある場合にも同じ購買行動をとることがあることが確認された。

顧客のグループ分け

 Yamashiro (2017)が、ハーレーダビッドソンジャパン傘下のディーラーの中から、販売業績が顕著に異なる2社を選んで事例分析を行ったところ、顧客間交流のマネジメントに大きな違いがあることが分かった。高業績ディーラーは、低業績ディーラーには見られなかった(i)顧客コミュニティに属する顧客の「初心者」「中級者」「上級者」へのグループ分け、(ii)顧客グループ別オリジナル・イベントの開催を実践していた。この(i)(ii)によって、「級内顧客間交流」のみならず「級間顧客間交流」も盛んになるために、顧客の車両乗り換え率が高くなり、販売業績が高くなっていた。

携帯の2台持ちユーザー

 日本の携帯電話市場においては、複数の携帯電話端末を使い分ける「2台持ちユーザー」と呼ばれる特異なユーザーが見られる。彼らは消費者知識の高さをもとにした情報処理能力によって、複数の製品を使いこなしている可能性がある。実際、Akiike and Katsumata (2016)によれば、当時の携帯電話市場はiPhoneとそれ以外のスマートフォン、フィーチャーフォンの間で各々特徴が異なっていた。また、2台持ちユーザーの特徴を見ると、携帯電話への消費者知識が高く、携帯電話をゲーム目的で使用する傾向にあった。この背景には、日本のスマートフォンの通信料の高さ、複雑さが存在した可能性がある。消費者知識が高いユーザーはそれらの特徴を見極めながら、自らの利用行動を加味して携帯電話を使い分けていたと考えられる。このような結果は高知識層向けマーケティングの可能性を広げるものである。

時間圧力と購買行動

 制限時間がある場合の購買行動は、制限時間のない場合の購買行動とは異なる。それは制限時間の中で、消費者が圧力を感じているからである。この状態は「時間圧力」と定義されている。Mitomi (2017) は、時間圧力に関する先行研究の手法と結果を整理したところ、(a)制限時間の影響は調べていても、そもそも時間圧力を直接測定してきたわけでなく、また(b)その制限時間もせいぜい数秒から数分と短く、マーケティングの実務的に意味があるかは不明である。時間圧力という用語自体は使い古されてきた感があるが、時間圧力に関するマーケティング研究は、これからが期待される未知の研究領域といえる。実際、既存研究では、期間限定商品のような数日から数週間の長期の時間制約における時間圧力の議論がされていない。Mitomi (2018) は、期間限定商品における時間制約の強さによって、期間限定商品の知覚品質が変化するのか、ウェブ調査を実施した。その結果、1ヶ月の期間限定商品よりも1週間の期間限定商品の方が、商品の品質を高く評価し、強く時間圧力を感じていることが明らかになった。


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