CAGEフレームワーク


CAGEフレームワークの応用

 国際経営で、国家間の違いをとらえる代表的なものがCAGEフレームワークである。CAGEとは、国の要因を次の四つに整理したものである。

  1. 文化的隔たり(cultural distance): 言語、民族、宗教、慣行、嗜好などの違い。
  2. 制度的・政治的隔たり(administrative and political distance): 法律、外貨規制、税制、労使関係などの違い。植民地関係がない、共通の地域貿易ブロックがない、共通の通貨がない、政治的対立、国際社会への関与度の違い。
  3. 地理的隔たり(geographic distance): 物理的な距離、時差、気候、衛生状態などの違い。
  4. 経済的隔たり(economic distance): 購買力(国民1人当たりの所得)、インフラの整備状況、教育や技術の水準、天然資源・人的資源・資金・情報の利用しやすさなどの違い。
企業が海外に進出して「国際」になると、国間のこうした4つの隔たり(distance)が影響してくる(Ghemawat, 2001)。これら4つは多くの研究において「国の違い」を捉える概念として用いられてきた(Berry, Guillen, & Zhou, 2010; Zhou & Guillen, 2016)。Oki (2020)は、このCAGEフレームワークを用いて、各国の新型コロナウィルスの感染者数および死亡者数と関係する国の変数を考察している。新型コロナウィルスの感染者数と死亡者数を従属変数に、各国の文化的隔たり、制度的・政治的隔たり、地理的隔たり、経済的隔たりを独立変数にした重回帰分析を、複数時点で行った結果、次の4点が明らかになった。
  1. 文化的隔たり、地理的隔たり、経済的隔たりは感染者数・死亡者数のいずれとも関係がない。
  2. 制度的・政治的隔たりは感染者数と関係があり、その国の汚職度が高いほど、政府によるCOVID-19の情報掲示が長いほど感染者数が少ない傾向にある。
  3. 死亡者数はいずれの要因とも関係がない。
  4. 特定の変数と感染者数・死亡者数の関係は時間とともに変化する。


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