シリコン・バレーとエコシステム


クローニング・シリコン・バレー

 Nakano (2021)によれば、1990年代後半以降、日本ではシリコン・バレーに代表される米国型の技術・資金・制度を原型にするcloning Silicon Valley modelが導入され、技術移転、特許収入、ファンドの組成が大きく注目されてきた。しかし、起業クラスターを形成してきた東京大学の場合は、学部学生・大学院生を教育して、金融機関・大企業・中央官庁で働く卒業生のネットワークを支援者のネットワークとすることで、技術の集積以上のエコシステムを構築してきた。産学連携のエコシステムの形成には、こうした自らは起業しなくても、起業を理解し、広く社会で活躍する人材の教育・育成こそが重要である。

エコシステム

 Sugawara (2021)は、東京大学本郷キャンパス周辺に集積している日本のベンチャー企業が形成する起業エコシステム(entrepreneurial ecosystem)である「本郷ヒル」(Hongo Hill)について、大学を中心として集積した234社のベンチャー企業について経年で分析している。すると、本郷ヒルでは、2004年から大学主導でインキュベータを中心に起業エコシステムが形成され始め、2014年頃を境にインキュベータ外のベンチャー企業の新規集積が増え、大学のコントロールを超えた起業家主導の起業エコシステムに成長していた。


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