顧客対応を集中して受け持つ部門であるコール・センターは、当初、(1)ネガティブな側面もあるが、一定程度の専門性を持ち、顧客との接点として企業にとって戦略的に重要な独立性の高い部門とみて研究された。しかし次第に、(2)他部門から孤立している厳しい条件の職場の典型としてみなされるように変化してきた。そのため近年ではネガティブな側面にだけ注目した研究ばかりになり、ポジティブな側面は無視されるようになった(Sato, 2018)。
モバイルゲームのような継続的な開発活動が特徴の製品の場合、(a)バグ対応の開発負荷に、(b)新規コンテンツの開発負荷が上乗せされ、開発現場が疲弊しがちである。Huang (2019)が取り上げる事例では、(a)一部のユーザーから指摘のバグ対応で現場が疲弊したが、バグの多くが特定のイベントやアイテムに関するものだったので、ゲームシステムに関連する緊急事態でない限り、迅速なアップデートはしないことにした。また、(b) PvE (Player versus Environment)のコンテンツ消費スピードが速いため、当初、新規コンテンツはPvE 70%、PvP (Player versus Player) 30%に配分していたが、PvEのコンテンツ消費スピードが想定以上に速かったことで現場が疲弊した。他方、PvPはユーザー生成が主なので、コンテンツの追加は頻繁ではないが、妥当性検証に時間がかかっていた。そこで、シミュレーションでユーザー対戦の一部を検証することで、検証時間を約35%短縮し、PvE 40%、PvP 60%に配分を変えた。(a)(b)により開発現場の疲弊感は解消されるとともに、(b)でソーシャル性の高いPvPの配分を増やしたことで、新規ユーザーの獲得と既存の課金ユーザーの収益化にも成功した。