Kim (2016)は、2000年代後半より議論が本格化されてきた多国籍企業の言語戦略に関する既存研究をレビューする。アカデミアでも、実務家の中でも、英語化(Englishization)だけが強調されがちであり、実際、世界共通語としての英語(English as lingua franca)を当然のこととして、英語化により発生する組織的問題やその解決のアプローチを取り扱う議論は数多い。しかし、世界共通語としての英語は、本来、選択肢の一つに過ぎず、多国籍企業の言語戦略(language strategy)が英語化を意味するというのは誤解である。言語戦略の既存研究では、むしろ、より多角的な視点からbilingual戦略やmultilingual戦略が提唱されており、より多様な言語的選択肢の可能性を比較検討するが故に、言語「戦略」と呼ばれているのである。