Weick and Quinn (1999)は、組織変革を扱った既存研究をレビューし、エピソード的変化と連続的変化という対照的な組織変革は、観察者の視点を反映していると主張する。すなわち、一つの組織変革をエピソード的変化としても、連続的変化としても説明・記述できるというわけだが、その具体的事例として、Abe (2019)がとり上げる洛和会音羽病院の変革の場合は、リーダーがエピソード的変化として変革を説明するのに対し、それと同じ状況を、フォロワーである職員は連続的変化として説明していた。
中間管理職の役割については多くの研究が蓄積されているが、その大半は中間管理職の管理業務に焦点を当てている。しかし、Tsuda and Sato (2020)が、日本企業の2183人の管理職を調査したところ、87%の管理職が、メンバーと同等の非管理業務を実行していた。また、非管理業務の割合が少なすぎる、あるいは多すぎるといった極端な中間管理職のケースでチーム・パフォーマンスが低く、適切な割合の非管理業務を行っている中間管理職の方がチーム・パフォーマンスは高かった。
組織が新活動を導入する際は、組織全体でその活動目的を共有する必要があると言われてきた。しかし、Abe (2018)によれば、改善活動を導入したX病院の事例では、改善活動の目的が職員によって異なるにも関わらず、(a)同じ部署内では、上下隣接する職位にある職員間、(b)異なる部署間では、同じ職位の職員間で、共通する活動目的に訴えるようにして新活動の有用性が伝達されていった。その結果、組織全体で活動目的を共有することなく、新活動が組織全体に普及していった。