正統性


正統性

「正統性(legitimacy)とは、社会的に構成された規範、価値観、信念、定義のシステム内で、ある主体の行為が望ましい、正しい、あるいは適切であるという一般的な認識や仮定である。」(Suchman, 1995, p.574)という定義が定番になっている。

 組織には構成員の支持を引き付ける正統性が必要とされるが、正統性の維持はなかなか難しいらしい。たとえば、Ashforth and Gibbs (1990)によれば、正統性を主張するために、(1)強制的同型化をはじめとする実質的手段や(2)行為の意味を変える象徴的手段を用いると、知覚された正統性が低い構成員ほど、そうした正統化の企てに懐疑的なので、正統性の過度な主張と知覚され、かえって知覚された正統性を減じてしまう「正統化の悪循環」(the vicious circles of legitimation)に陥るという。正統化(legitimation)は両刃の剣(double-edge)らしい。

正統性獲得

 組織エコロジー論の密度依存(density dependence)モデルでは、ある組織形態を持つ組織が増えると(密度が高まると)、その組織形態は社会の中で当たり前となって正統性が高まり、そのことで組織の誕生率は上昇し、死亡率は低下すると考える。とはいえ組織数が増えて飽和状態になると、組織間競争が激化し、組織の誕生率は低下し、死亡率は上昇するだろう。このように、正統性獲得(legitimation)と競争の結果として、組織の生死が決まるので、組織個体群の組織数である「密度」と (a)組織の誕生率との間には逆U字型関係、(b)組織の死亡率との間にはU字関係があるとしている。

 新規性を伴うアイデアは既存組織に中では抵抗を受けやすい。資源を動員するには、何らかの形で正統性を獲得する必要がある。JR東海の300系新幹線の開発の場合には、それまでの国鉄が分割民営化され、新幹線収入がそのほとんどを占めるJR東海が誕生したことで、プレイヤーが限定され、組織の大半の賛同を得ることが可能になった。すなわち、支持者の絶対数ではなく割合(まさに密度)が向上したことで正統性を獲得できたのである(Kikuchi, 2018)。


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