オープン・モジュラー
太陽光発電産業
世界の太陽光発電(Photovoltaics; PV)産業では、2006年まではシャープが首位であったが、2007年にQ-Cells (独)、2009年にFirst Solar (米)、2010年にSuntech Power が首位になって以降は中国企業が次々と交代し、経営破綻していった。Tomita (2022)によれば、
- 結晶シリコン型太陽電池は、セルと呼ばれる太陽電池素子とその周辺のモジュール部品からなる。技術開発で先行するシャープやQ-Cellsは、技術的に難しいセル工程の材料や製造装置開発に携わり、プロセス技術や品質管理のノウハウを自社内に蓄積していくことで変換効率の向上を図った。この結果、日本企業は変換効率の高さで技術的に先行することとなった。つまり、クローズド・インテグラル型の製品アーキテクチャの製品を手がけることで、競争力を発揮していった。
- しかし、セルの大量生産が進み、取引がグローバル化すると、数値としての管理基準を標準インターフェースにして取引が行われるようになり、技術ノウハウもオープンになっていった。すると、セル生産に必要な各工程の製造装置を開発・製造・販売する企業が登場し、彼らがターンキー・ソリューション(turn-key solution)を提供するようになった。中国企業はこれらを購入することで、非常に短期間で最低限の品質基準を超える太陽電池を生産できるようになった。つまり、オープン・モジュラー型に移行したのである。
- 中国では、成功者を見て周りがそれを真似てどんどん起業したために、多数の企業が短期間に次々と起業・参入し、(i)他国の企業は低価格で破綻した。しかし、(ii) その中国企業でさえ、旺盛な起業による慢性的な供給過剰の中で、稼働率は低下しており、上位メーカーでも、ちょっとしたきっかけが致命傷となり破綻していった。