価格戦略


価格戦略

 一般に、市場が成長・成熟化し、製品がコモディティ化すると、価格競争で製品価格が低下していくと考えられている。しかし、デジタルカメラ市場では最初は価格が低下したが、その後上昇に転じた。低価格セグメントから高価格セグメントにマスが移ったからだけではなく、どの価格セグメントでも価格が上昇に転じていた。(a)低価格セグメントでは低価格製品企業が撤退し、残存企業がより高品質製品に注力することで価格が上昇に転じた。(b)高価格セグメントでは、主要企業の寡占化が進み、最高級製品の参照価格に見合った製品が市場に投入されることで、価格は上昇し安定した。(c)中価格セグメントでは、低価格セグメントからより高品質製品を開発し参入してきた企業、高価格セグメントから代替セグメントとして参入してきた企業の2種類の企業が参入することで価格が上昇した(Ichikohji, 2019)。

フリーミアム

 フリーミアム(freemium)とは、free (無料)とpremium (割増料金)の造語で、基本的なサービスや製品は無料で提供し、さらに高度なサービスや機能や特別なサービスや機能については料金を課金することで収益を得るビジネスモデルである。A社のRプロジェクトは、(a)ゲームのプレイ料金を基本的に無料にして多数のユーザーを獲得し、(b)その中から少数の課金ユーザーを作り出して収益を上げるフリーミアムモデルのゲーム事業である。Rプロジェクトでは、収益増加のために、課金能力ブーストアイテムを追加した。すると、当初、月間売上高は20%増加したが、2か月後には既存の無課金ユーザーのプレイ時間が減り、新規の無課金ユーザーの離脱も増えてしまった。こうした課金能力ブーストアイテムの投入は(a)と(b)のバランスを崩し、長期的には収益を減少させ、ゲームを短命化してしまう可能性があり、そのことはシミュレーションでも確認できた(Huang, 2020)。


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