生産性のジレンマ


A-Uモデル

 Abernathy-Utterback model(A-U model)はイノベーション研究に大きな影響を与えており、多くの論者が取り上げている。その多くはAbernathy and Utterback (1978)を引用しているが、Abernathy and Utterback (1978)では、ドミナント・デザイン(dominant design)のアイデアがモデルに明示されておらず、我々がイメージしているA-U modelとは異なる。多くの論者が取り上げるA-U modelは、実は、Utterback and Abernathy (1975)Abernathy and Utterback (1978)、Abernathy (1978) The productivity dilemma (Johns Hopkins University Press)という3つの主要な業績を経て段階的に積み上げられて形成されてきたものであり、Abernathy (1978)で完成し、それが我々がイメージするA-U modelとなっているのである。しかしながら、A-U model が普及する過程で大きな影響力を持ったTeece (1986)やUtterback (1994) Mastering the dynamics of innovation (Harvard Business School Press)が、その完成形のA-U model をAbernathy and Utterback (1978)のモデルとして引用して取り上げたため、それが孫引きされ、A-U model= Abernathy and Utterback (1978)のモデルであると誤って流布してしまった。そもそも、Abernathy and Utterback (1978)の論文は、タイトル・ページ(p.41)より前のページ(p.40)にA-U modelの図が本文とは独立に登場するという不思議な構造をしており、その図について、本文中(pp.41-47)には説明がなく、言及もされていないのだが、そのことを知らないで引用している研究者も多いのである(Akiike, 2013)。

開発生産性のジレンマ

 IT化に伴い、開発プロジェクトが継続されていく事例が増えている。しかし、それまでに蓄積したデータや開発のノウハウを活用して開発生産性の向上を目指すと、今度は、それに縛られて、製品機能の拡充が難しくなる。実際、各製品においては、開発生産性の向上と製品機能の拡充が両立しがたいという “開発生産性のジレンマ” は確かに存在している。しかし、Ikuine (2021)で取り上げる事例では、企業は、ある製品で、開発生産性を犠牲にして製品機能の拡充を行うと、次の製品でそれを流用したり、利用して簡略化したりすることで開発生産性の改善、つまり、連続した新製品の流れとして管理することによって、開発生産性のジレンマを克服していた。


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