Kuwashima (2013)は重量級プロダクト・マネジャー(heavyweight product manager: HWPM)に関する3つの補足説明を提示する。HWPMは、Fujimoto (1989) Organizations for effective product development: The case of the global automobile industry (Doctoral dissertation, Harvard Business School)による造語であるが、内部統合者と外部統合者を兼ねる強力なマネジャーをさす。
日本の電機産業で、競争力を維持している工場では、工場トップが新製品の提案や投入をして、現場を活性化させていた事例がある。つまり、新製品の投入が、現場組織のコミュニケーションを活性化するのである。そこで、Inamizu and Fukuzawa (2017)は、質問紙調査のデータを用いて、現場組織の「風通し」(コミュニケーション活性化に関する指標)について分析したところ、風通しとQCDF (品質、コスト、納期、柔軟な生産)の間には相関が見られなかったが、風通しと「新製品の投入回数」及び「新製品の提案/開発」の間には、正の有意な相関があった。実際、新製品投入回数、新製品提案で上位の工場では風通しが良かった。このことは、工場トップの新製品提案や新製品投入といった行動や施策が、現場組織のコミュニケーションを活性化させることを示唆している。
Wada (2021)によれば、テレビゲームは、世界観、シナリオ、グラフィックス、音楽などの要素のインテグリティが求められる。テレビゲームの製品開発プロジェクトにおいて、各要素の設計・調整を行う人材には、製品の構成要素の全体的な理解が必要となる。20年以上前の日本のテレビゲーム産業では、新入社員が入社してすぐに製品の各要素を設計・調整する場に参加することができ、製品の構成要素の全体的な理解を身に着けることができた。しかし、近年の開発プロジェクトの大型化により、新入社員に割り振られる作業は細分化・モジュール化され、製品の構成要素の全体的な理解を身に着けることが困難になった。この問題に対し、日本のテレビゲーム開発会社のサイバーコネクトツーは、小規模の実験的なテレビゲーム開発プロジェクトを立ち上げ、これを若手社員に担当させることで解決を図っている。