製品開発組織


重量級プロダクト・マネジャー

 Kuwashima (2013)は重量級プロダクト・マネジャー(heavyweight product manager: HWPM)に関する3つの補足説明を提示する。HWPMは、Fujimoto (1989) Organizations for effective product development: The case of the global automobile industry (Doctoral dissertation, Harvard Business School)による造語であるが、内部統合者と外部統合者を兼ねる強力なマネジャーをさす。

  1. Footnote 1: こうした製品開発プロジェクトのマネジャーに対して、Fujimoto (1989) があえて“プロダクト”マネジャーという名称を付けた理由は、時間的な責任・権限の幅広さ(製品開発プロジェクト終了後も、当該製品に責任・権限をもつこと)を強調するためであった。
  2. Footnote 2: Clark & Fujimoto (1991) において、HWPMの測定のために使われた内部統合指数、外部統合指数、および、両者を構成する組織変数のリストは、同書のAppendixに掲載されている。しかし、両指数の構成要素として指定されている組織変数は間違い(誤植)である。正しくは、両指数が指定する組織変数を逆にする(入れ替える)必要がある。
  3. Footnote 3: Clark & Fujimoto (1991) の実証分析では、「内部統合度は高いが外部統合度は低いケース」、「内部統合度は低いが外部統合度は高いケース」の両方を、「軽量級プロダクト・マネジャー組織」に分類している。しかし、2つの製品開発組織の特性は大きく異なる。両者を区別して分析することで、製品開発組織と製品開発成果との間の関係について、より深い洞察が得られる可能性がある。

新製品と風通し

 日本の電機産業で、競争力を維持している工場では、工場トップが新製品の提案や投入をして、現場を活性化させていた事例がある。つまり、新製品の投入が、現場組織のコミュニケーションを活性化するのである。そこで、Inamizu and Fukuzawa (2017)は、質問紙調査のデータを用いて、現場組織の「風通し」(コミュニケーション活性化に関する指標)について分析したところ、風通しとQCDF (品質、コスト、納期、柔軟な生産)の間には相関が見られなかったが、風通しと「新製品の投入回数」及び「新製品の提案/開発」の間には、正の有意な相関があった。実際、新製品投入回数、新製品提案で上位の工場では風通しが良かった。このことは、工場トップの新製品提案や新製品投入といった行動や施策が、現場組織のコミュニケーションを活性化させることを示唆している。

テレビゲーム開発

 Wada (2021)によれば、テレビゲームは、世界観、シナリオ、グラフィックス、音楽などの要素のインテグリティが求められる。テレビゲームの製品開発プロジェクトにおいて、各要素の設計・調整を行う人材には、製品の構成要素の全体的な理解が必要となる。20年以上前の日本のテレビゲーム産業では、新入社員が入社してすぐに製品の各要素を設計・調整する場に参加することができ、製品の構成要素の全体的な理解を身に着けることができた。しかし、近年の開発プロジェクトの大型化により、新入社員に割り振られる作業は細分化・モジュール化され、製品の構成要素の全体的な理解を身に着けることが困難になった。この問題に対し、日本のテレビゲーム開発会社のサイバーコネクトツーは、小規模の実験的なテレビゲーム開発プロジェクトを立ち上げ、これを若手社員に担当させることで解決を図っている。


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