限定された合理性


限定された合理性

 Simonといえば、すぐに想起させるほどに重要な「限定された合理性」(bounded rationality)であるが、実は、Simon (1947)『経営行動』(Administrative behavior: A study of decision-making processes in administrative organization)の元の本文には、用語として一度も登場しない。にもかかわらず、ノーベル経済学賞受賞の2年前1976年に出版された第3版の索引では、“rationality” の項目の子項目として “bounded rationality” が3箇所で索引をつけられている。そこに書かれていることをつなぎ合わせると、 (T) それは、個人の合理性の制約によってboundされている。(U) それは、ゲーム理論で仮定されているように「すべての代替案」と「それらのすべての結果」を知って「所与の価値」を最大化することはできない。(V) それに、その所与の状況の見地から合理的である行動はグループの見地からも合理的という意思決定の環境を与えることで、組織が補う。そこに垣間見える合理性は、ゲーム理論との違いを強調すれば、“bounded rationality”ということになるのだろう。しかし、それにぴったり当てはまる概念はバーナードの『経営者の役割』(The functions of the executive) (Barnard, 1938)が既に提示していた「限定されてはいるが重要な選択力」(the restricted but important capacity of choice) (p.38 邦訳p.39)が一番ぴったりしていたのである(高橋, 2008; Takahashi, 2015)。


Handbook  Readings  BizSciNet

Copyright (C) 2021 Nobuo Takahashi. All rights reserved.