テレワークは、今のところ少なくとも
労働と休暇を組み合わせて行うワーケーションは、ICTの浸透に伴って欧米で登場した概念で、フリーランス等に象徴される個人の自由な働き方とされるが、日本においてはその元来の意味合いを離れ、一部のトレーニング・プログラムがワーケーションと称されるなど、特異な展開が見られる。こうした変化はどのようにして生じたのだろうか。Yoshida (2021)は3つの地域における調査を踏まえ、日本において特徴的なサテライトオフィス・ワーケーション、ラーニング・ワーケーションの登場経緯やそれらを取り巻く各主体の狙いを整理した上で、
COVID-19の影響により、日本では在宅勤務(telecommuting)が急速に普及した。従来の在宅勤務研究では、在宅勤務はi-dealsの結果であり、location flexibility i-deals (LFi-deals)であるという前提で議論が行われてきた。ここでi-dealsとは、個人が雇用者と交渉して得た特別な取り決めのことで、idiosyncratic dealsを略してi-dealsと呼んでいる(Anand, Vidyarthi, Liden, & Rousseau, 2010)。ところが、COVID-19の流行下では、半強制的な在宅勤務が出現した。そこでTsukamoto (2021)は、
2020年前後から、日本ではテレワークやワーケーションが話題になるが、Takahashi (2021)によれば、実は1990年頃の日本でも同様の議論があった。当時、複数の住居を行き来しながら生活するマルチハビテーションが注目されたが、実際には、1人の管理職が、東京圏の本社・親会社と地方の支社・子会社の2ヵ所のオフィスのどちらにも所属しているような状態であるマルチオフィスの方が本質的に重要だった。マトリックス組織が進化したマルチオフィスの状態で重要なことは、どこに住むかではなく、どこで働くかということだった。こうした教訓があるにもかかわらず、いまやテレワークはコロナ禍で在宅勤務と同義語のようになってしまい、ワーケーションも自治体側の「住んでほしい」という念が強すぎる。マルチハビテーション同様、どちらも住む呪縛が解けない。しかし、テレワークやワーケーションにおいては、自宅もしくは自宅近くで働くことよりも、マルチオフィスを実現することの方が重要である。それは30年前もそうだったし、コロナ禍以降でも変わらない。