公差(tolerance)とは「製品の機能上許容しうる最大の寸法と最小の寸法の差」のことである。Byun (2019)によれば、鉄鋼メーカーA社でも、教科書通りに、その幅内であれば、調整不要で工程間の引き渡しができるように、あらかじめ公差を設定し、管理をしてきた。ところが、自動車用鋼板のような高級鋼生産では、品質測定値が公差内に収まっていても(不良品判定には至らない)、公差の限界値に近いことが複数工程で続き、公差のスタックアップ・リスクが発生していた。それに対し、成功している鉄鋼メーカーB社では、一貫品質部が工程間で公差のすり合わせをしており、しかも公差とはいうものの、一点管理に近い厳格管理をしていて、教科書とはまるで異なる公差管理をしていた。