生物は環境に適応した個体が生き残る進化により、多様な種へと分化していく。同じく、製品も国ごとの環境に適応することにより、全く違った特性をもった製品へと進化する。Wada (2017)は、同じルーツを持ちながら、欧米と日本で異なる製品へと進化したCRPG (Computer Role-playing Game)について紹介する。欧米において、CRPGはTRPG(Table-top Role-playing Game)をビデオゲーム化した製品として誕生した。以後の技術発展において、開発にTRPGファンが多く関与し、TRPGと同質の「面白さ」の再現が目指され、「自由な行動の選択によるストーリー展開」や、「仮想世界のリアルなシミュレート」が重視された。一方、日本においては欧米のCRPGが移入されるかたちでCRPGの普及がはじまった。TRPGではなく、CRPGに最初に触れた結果、(1)当時のCRPGの技術的限界による「固定されたストーリー展開」、(2)「経験値を貯め、レベルを上げてcharacterを成長させるシステム」という、RPGの本質とは異なる要素が、「面白さ」として受容された。これに、(3)日本のマンガ・アニメ文化に影響されたアニメ的なキャラクターデザインを加えたものが、日本におけるCRPGのスタンダードとして普及していく。この結果、TRPGや欧米のCRPGと異なる「面白さ」を追求する、JRPG(Japanese Role-playing Game)という、独立したジャンルへと進化していくことになった。