弱い紐帯


弱い紐帯

 ネットワークの中で、2点間を結ぶ唯一のパスとなる線をブリッジ(bridge)という。Granovetter (1973)は、このブリッジの紐帯としての強さを考察する。ブリッジは強い紐帯であるとイメージしがちであるが、この論文の結論は、ブリッジは弱い紐帯であるというものであった。それに対し、高橋・稲水(2007)Takahashi and Inamizu (2014)は、Granovetter (1973)のthe strength of weak ties理論には論理的な飛躍があることを示す。Granovetterは、「禁じられたトライアド」が存在するので、「ブリッジ」であれば「弱い紐帯」となると述べる。しかし、実証的証拠を挙げる後半部分では「弱い紐帯」であれば「ブリッジ」であるというように、論理関係に逆転が生じてしまっている。また、「禁じられたトライアド」も、「決して起こりえない」と言い切れる証拠は実はあまりないのである。

 ただし、「弱い紐帯」は事例分析に新しい視点を持ち込んだことは否定できない。Kono (2016)は、自動車用部品から医療機器への多角化成功例となった東海部品工業を取り上げ、社長が率先して弱いつながりを形成し、その後、弱いつながりを強いつながりに育てることによって、医療機器への参入に必要な知識と能力を獲得していたとする。これはGranovetterの主張を補強・支持する類の証拠にはならないが、弱い紐帯でも多角化の足掛かりになることを示している。


Handbook  Readings  BizSciNet

Copyright (C) 2017-2021 Nobuo Takahashi. All rights reserved.