仕事の報酬は次の仕事


ワクワク理論

 『虚妄の成果主義』(高橋, 2004)が唱える「日本型年功制」の要素のうち、「仕事の報酬は次の仕事」であるという説をTakahashi (2015)はワクワク理論(Work-Work Theory)と呼び、日本企業で一般的に観察できるワクワク理論のシステムについて、「仕事の報酬は給料」のWork-Pay Theoryと対比しながら、その特徴を明らかにする。

  1. 仕事に差が付くことで加速度的に昇進・昇給で差が付き、
  2. 今の仕事に満足しないで現状打破の気概を持ち、
  3. 上司は適材適所の人選をし、
  4. 次の仕事で報いるために定期的人事異動を行い、
  5. 一緒に仕事をすることに投資することで企業成長を可能にした。
  6. ワクワク理論では、仕事の内容を徐々に難しいものにしていくことで、内発的動機づけを実現する。
それがわくわく感につながる。でなければ、内発的動機づけとはいえない。こうして、ワクワク理論は自己決定理論とは異なるアプローチで内発的動機づけを素直に実践することで、発想の大転換をもたらす。

プロセス志向と結果志向

 組織変革を行う際に、マネジャーには抵抗を取り除く役割が求められる。そのため、これまでの研究では十分なパワーを持ったマネジャーが組織変革の必要性を認識し、変革を推進することが重要であると指摘されてきた。しかし、それだけでは不十分である。Sato (2015)は、日本の自動車ディーラーX社で同じようなパワーを持つ二人のストア・マネジャーによる組織変革の比較調査を行った。その結果、組織変革に成功した店舗ではストア・マネジャーが長期的視点を持ち、プロセス志向であった。これに対し、ストア・マネジャーが短期の結果志向を残していた場合には、店舗は時間の近視眼に陥り、組織変革に失敗していた。近視眼は常に問題となるわけではないが、営業組織のような成果が数値化しやすく、フィードバックが早い組織で組織変革を進める場合には障害となる。


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